グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


「筍」は高級野菜


ホーム >  会長ブログ >  「筍」は高級野菜

 野菜として食用にされる代表的な筍は、「孟宗竹」で日本にもともとあった竹でないことははっきりしているようです。間違いなく中国沿海州から日本に持ち込まれ、全国に広がったもののようです。ですから日本への定着はそんなに古い時代のことではないと思います。

 私たち日本人はとても筍が好きで、春から初夏にかけての味覚といえば真っ先に思い浮かべるのは筍だと思います。それもほとんどの方が思い浮かべるのが孟宗竹の筍ではないでしょうか。弊社も30年以上にわたり中国安徽省、浙江省、福建省など孟宗竹のある地域で収穫期に缶詰して輸入保存し周年、煮物の材料として使ってきました。それ以前は、九州四国地域から缶詰に加工されたものを使っていました。

 50年前に先代の私の父が筍とあらめ(地元産の海藻で「相良メ」又は「荒布」とも呼ばれている昆布の仲間)を甘辛に煮付けたのが最初でその当時は、九州の筍でした。当時10歳だった私は学校の休みや放課後父母の手伝いをしましたが、手切りしてから釜で煮て、冷やしてポリ袋につめて口を輪ゴムで縛るだけのものでしたが、それが飛ぶように売れて。あの当時の静岡地場料理の大ヒットだったのかもしれません。

 時が過ぎいつの間にか日本も豊かになりその後15年くらいで九州や四国の筍缶詰の供給はだんだんと細くなっていったのです。なぜなら「たけのこほり」は大変な仕事で、よほどお金にならないと掘ってくれなくなってしまい、筍缶詰の買い上げ単価では原料筍が集まらなくなってしまったのです。そして中国のもともとの自生地で、筍缶詰の本格製造が始まったのです。それからまた30年以上、通算しますと私の記憶に有る限りこの50年以上にわたり筍という野菜は、缶詰技術のおかげで旬の高級野菜という印象は薄れ、いつの間にか一年中食べられる保存野菜へと認識が変化していったのです。

 幸いなことに日本から中国へ場所が変わって、筍の場合は孟宗竹の自生地の原点に帰ったのです。適地適作の弊社の理念から照らし合わせると栽培は適地に帰った歴史なのですが、筍の竹林は耕地面積あたり収入も少ないので、ほとんどが斜面地栽培。中には20度を超えるような急斜面も少なくなく、収穫作業は大変な重労働です。農家に現金収入のほとんど無かった当時とはうって変わって、豊かな中国の実現とともに、ここに来てかつて40年前に日本の農村で経験した様な「誰も収穫に行ってくれない。」という悪夢が中国でも現実のものになったのです。

 実は、中国の特定地域の筍はとても品質が良く、『日本産』と変わらないほどおいしい。供給体制が急激に整備され需給が緩んだために起こった瞬間的な安値だったこと。中国農民の安い労働力を輸入したに過ぎない発展段階で瞬間的に起こる現象であることも忘れかけていたのです。

 私たちは、ここからが腕の見せ所と考えています。筍はとても体に良い野菜です。日本人のこの食習慣が継続できるよう努力する責任があると痛感しています。これから始まる筍収穫に向け知恵を絞っています。